家の中を整頓していた。親に託していたすわり机を新次郎は使うことにして自室に運んだ。
 すると、居間で椅子に腰掛けていた親が急に、眠るように容態が変化した。
 新次郎はそこで目が覚めた。朝だった。
 夜中に地震があった。福島県沖だった。

 夕方、自転車置き場に行き帰宅しようとすると、前の籠の上のコーナーに、しがみついているものが在った。蟷螂のおそらく、子どもだった。赤茶色く、薄色で小さい。ポケットから、レシートを出して払うと、紙ごと落ちて、コンクリートに這った。
 レシートを片付けないわけにいかず、籠の網に入れた。
 蟷螂は、観察すると、右足が途切れて見えたが、声を掛けると歩き、脚は健全だった。
 蟷螂は付いてきたが、自転車は前へ走り去った。

  蟷螂を乗せて走ることはできたと思った。けちなことをした。新次郎は、蟷螂君に遠く別れの挨拶を告げた。

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